生まれ変わったら
窓を開けると、
どこからか甘い花の香りがした。
ふと、生まれ変わったら、風になりたい、
と思った。
生まれ変わるという概念に興味を持ったのは、6歳の春。
私が生まれる2週間前に亡くなったという、
曾祖母の七回忌のとき。
何人もの親戚に、「ひいおばあちゃんの生まれ変わり」と
言われた。
そのとき私は、好きなチューリップやいちごなどを指差して、
「生まれ変われる?」と聞いたり、「生まれ変わりたい」と、
周りを慌てさせたらしい。
きっと私にはまだ死の概念はなかったと思うので、
漫画の中の変身のようなイメージで言ったのだと思うけど。
私が唯一覚えている場面は、
父親に「お前なんか、ハエかゴキブリになる」と言われて
大泣きしたこと。
祖父の部屋に駆け込んだら、祖父が私に花の種を見せて、
「花は、また来年も花になるやろ。
お前も生まれ変わっても、また人間になるよ」と
言ってくれたこと。
そのとき、何を思ったのか、私はその種を飲み込んだ。
生まれ変われる魔法の薬とでも思ったのだろうか。
祖母が私を慌てて吐かせながら、「ママに内緒ね」と笑った。
だから、この話は、今でも私の母は知らないはず。
風に生まれ変われるとしたら、私は何をしたいのだろう。
花の香り、木の香り、自然の香りをさりげなく運びたい。
気づく人は気づくし、気づかない人は気づかない。
大切な仕事だと知っていても、嫌な匂いは運びたくないの。
生まれ変わっても、
好きなことだけしたいのは変わらないのかも。
コメント