
夜、母の友人から電話がかかった。
母になにかあった?
どきどきしながら、電話をとると、
電車の中で倒れて、救急車で運ばれた。
意識は戻った。
点滴するので、1時間以上は帰れない。
というようなことばが耳に入ってきた。
頭がぼーっとして、「はい」「ありがとう」しか言えない。
電話を切ったあと、なぜか洗い物を始めていた。
お皿を洗いながら、ふと我に返った。
こんなことしてる場合じゃない。
迎えに行かなきゃ。
母の友達が付き添ってくれているのに。
どこに行けばいいの? 何を持っていけばいいの?
うろ覚えの病院名を検索して、地図を印刷して、
タイトスカートのスーツから、動きやすい服に着替えて、
保険証、タオル、ビニール袋、お水、帰りのタクシー代・・・
頭は働いても、体がついてこない。
小さな家の中を何往復もして、必要なものをかき集めた。
それでも、思いついた半分以上は、
家を出たときには持っていなかった。
病院に着くと、母はまだ点滴中だった。
貧血と脱水症状で、一時的なものらしい。
母の友達が母の体を支えてくれて、怪我もしていない。
ずっと付き添ってもらって、母も心強かったと思う。
点滴を外してくれる看護師さんが、走り回る忙しさの中で、
にこやかな笑顔と優しい口調で母に話しかけてくれる。
母も、ほっとした表情を浮かべている。
私はせいいっぱいお礼を言うことしかできない。
周りの方々のあたたかさに、涙が出そうになる。
とっさのできごとに、頭も働かず、
思うように行動できない自分の弱さに直面した。
そして、人のあたたかさが身にしみた。
ありがとうございます。
最近のコメント