「セラピスト」で人と向き合う心構えを確認する
最相葉月さんの「セラピスト」。
カウンセラー、コーチ、医師、看護師、教師、などなど
対人援助に関わる方々に、
ゆっくりと読んでほしい、おすすめの本。
「セラピスト」 最相葉月 新潮社
大学で臨床心理をどっぷり学んだので、
河合隼雄先生、山中康裕先生、中井久雄先生、と
尊敬する先生方のエピソードや会話が
たっぷり出てくるのが懐かしく、
著者の最相葉月さんが、
自ら大学院生やクライエントとして体験しながら、
丁寧に深く取材されているので、
改めて、先生方の関わり方や一言一言が
心の奥までしみいる。
木村晴子先生のクライエントの全盲の女性から
箱庭の作品を「お役にたつのなら」と公表許可を
いただいていても、
「彼女自身が見えない彼女の箱庭を、
どうして第三者が見ていいだろう」、と
使わないことに決めたというご判断も、
最相葉月さんが、ジャーナリストとしてではなく、
1個人として洞察された姿勢に心を打たれた。
河合隼雄先生の息子さんの俊雄さんによると、
時代の変化とともにクライエント像も変化していて、
対人恐怖症が減り、
ひきこもりや深刻な犯罪が増えているのは、
「主体性のなさ」によるという分析が興味深い。
主体性が欠如しているから、人と関係が持てず、
自分の内面と向き合って振り返ることが難しいため、
箱庭療法や絵画療法がやりにくくなっているという。
第一人者の愛弟子とか、本場で学んだとかではなく、
今、目の前にいる生身の人間にどう向き合うか、
自分自身とどう向き合うか、
時々読み返すことで、
人と接する仕事をするうえでの心構えを確認できる
メンター的な本になりそうな気がする。
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