「長いお別れ」
中島京子さんの「長いお別れ」を読む。
「長いお別れ」 中島京子 著 文藝春秋
認知症の父親をめぐる家族のお話。
「長いお別れ」
タイトルの意味は、
アメリカでは、認知症を「Long Goodbye」と表現するらしい。
少しずつ記憶をなくして、ゆっくりと遠ざかって行くから。
妻と3人の娘さん、さらにその家族たちが、
それぞれの事情や立場から、
本音を吐き出しながら、明るくユーモラスに描かれて、
小説はあたたかい気持ちで読める。
同時に、あまりにリアルで、心が痛い。
私の父も認知症を長く患い、
実家で母が介護する老老介護の大変さを実感し、
疲労、費用負担、今後の不安などを経験したので、
介護制度の話題や職員さんとの会話が、生々しい。
それでも、小説として、重苦しくならないのは、
著者の愛情深いまなざしのおかげかもしれない。
美しい景色の映像や、
お父さんや奥さんの笑顔のシーンが浮かぶので、
映画になるといいかもしれない。
介護中の方には、気持ちをわかってくれる同志のように、
これから起こるかもしれない方には、予行演習のように、
話し相手になってくれそうな本。
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